
福井市で1986年に女子中学生(当時15)が殺害された事件で、殺人罪で懲役7年の判決が確定し服役した前川彰司さん(59)の裁判のやり直し(再審)が6日、名古屋高裁金沢支部で始まりました。同支部は昨年10月の開始決定で、警察官が供述を誘導したり、検察側が都合の悪い証拠の存在を知りながら隠し続けたりしたとして、厳しく批判しています。
なぜ、このようなことが起き、冤罪(えんざい)救済が必要な人を長期間苦しめることになるのでしょうか。
大阪大法科大学院の水谷規男教授(刑事訴訟法)は、取り調べの改革だけでなく、再審手続きをより速く実効性の高いものにするための法制度の充実が必要だと指摘しています。
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警察いいなり調書ができる背景
――検察側の有罪主張を支えたのは、「事件の夜、血の付いた前川さんを見た」と証言した関係者の供述でした。
前川さんと犯行を結びつける証拠が全くない、という証拠そのものに特徴がある事件でした。知人が作ったストーリーに、周辺の関係者が合わせてしまう。捜査機関にとっては、もともとほころんでいる供述証拠でも、いったん得られてしまうと「前川さんが犯人」というストーリーが描けてしまうのです。
――証言の誘導など、捜査手法の問題も開始決定で厳しく指摘されましたが、取り調べの録音・録画などで改善されたのでしょうか。
改善された部分と本質的に変わっていないところがあると思います。取り調べが録音・録画されていても、検察官はだんだんカメラが回っていることを意識しなくなるのか、「供述をかえたじゃないか」と怒鳴りつけている映像が流された事件の裁判もありました。
警察官による取り調べでは、容疑者が精神的に屈服してしまっていると、いいなりの調書になってしまいます。「署名押印があるから任意だ」というのは本当に成り立ちません。刑事訴訟法では、任意にされたかどうか疑いのある証拠は使えない、というのが前提です。
証拠開示の意識、検察に根付いたか
――前川さんにとって到底納得できないストーリーで有罪が確定してしまいますが、弁護側はどうやって再審の扉を開いたのでしょうか。
再審請求で「犯人ではない」…